「HTML5 でコーディングしたら SEO (検索エンジン最適化) 的に有利になりますか?」 っていう質問、たまに聞かれるんですけどね。
個人的には "SEO のために" HTML5 にするか XHTML にするかなんて悩んでる暇があったら利用者に役に立つコンテンツの 1つでも考えた方がいいよと思うわけですし、聞かれたときはそのように答えているわけですが、折角なので簡単に考えをまとめて Blog に書いておいてみようかなと思ってダラダラと書き始めていたら、自分が書こうと思っていた内容をすべて言ってくれてしまっている記事が Impressive Webs で 10倍わかりやすく書かれていたので引用しつつ紹介してみようと思います。
原文
Is HTML5 Good for SEO? : Impressive Webs
ということで、まずは記事冒頭から。
Also, when we use the term "HTML5", what exactly are we referring to? HTML5 covers a number of different features and technologies, some of which have nothing to do with SEO. So, generally speaking, when people ask this question, they're usually referring to HTML5's new semantic elements. So, I'll primarily focus on those here.
訳:
「HTML5」 という用語が正確には何を指しているのか? HTML5 はさまざまな機能や技術を含んでいて、中には SEO とは無関係なものもあります。なので一般的にこの質問 (HTML5 は SEO に有効なの?) における 「HTML5」 とは、新しく追加されたセマンティックな要素を意味します。ここでは主に HTML5 で追加された新しい要素に焦点を当てたいと思います。
HTML5 とはっていう話はし始めると長くなるので適当に。要するに HTML5 で追加された要素がどういう風に解釈され、それによって SEO 的な効果が変わるのか?という点に絞って話を進めましょうと。この質問への回答例としていくつかのサイトで書かれた記事へのリンクが紹介されています。
で、それに対してですが、
To put it quite bluntly: They're wrong. No, they're not 100% wrong; I would never say that about any article. But there are things stated in those pieces that are somewhat misleading and presumptuous. Not to mention that a few of them have some blatant errors. The reason I point these ones out specifically is because they come up early in search results for HTML5 and SEO.
訳:
率直に言えば間違っています。100% 間違っているとは言いませんが、いくつかの誤解や目に余る間違いがあるのは確かです。この 3つの記事を例として上げたのは、HTML5 と SEO で検索したときに検索結果の上位に表示されるからです。
つまり、例として挙げられたサイトの内容は、HTML5 を選択すると SEO 的に優位に働くよという論調なわけですが、ちょっとまてと。
Will HTML5 Help Your Content Rank Higher?
Using HTML5 semantic elements in your pages today will not give your content higher search engine rankings. And I would venture to guess that the semantic elements will never have an effect on page rankings. In fact, it's almost ridiculous to think this would be the case.
Even if there were eventually some small benefit added to Google's ranking algorithm for the semantic tags, the difference would be so small that it probably wouldn't matter. Although we don't know, and probably will never know, how Google ranks pages, we do know that two of the most important factors are relevancy of content and quality backlinks. And that should never change. Trivial use of semantic tags should never affect SEO rankings, and they certainly don't do so as of this writing.
訳:
HTML5 はあなたのコンテンツの上位表示を助けてくれるのか?
今日、自分の Web ページに HTML5 の要素を使用したとしても、そのコンテンツが検索エンジンで上位に表示されることはありません。そして恐らくこの要素が表示順位に影響を与えることは決して無いだろうと想像します。実際にそんなことがあると考えることはばかげていると言ってもいいでしょう。
もし最終的に Google の検索順位決定アルゴリズムに HTML5 の新要素が多少プラスに働くとしても、その差はあまりにも小さくて大きな影響は与えないでしょう。Google がどのように Web ページの表示順位を決めているかは知らないし、今後も知ることはないと思いますが、検索順位に最も重要な 2つの要素はコンテンツの関連性と高品質な被リンクであることは重々承知しています。またこれが変わることはないでしょう。それに対して HTML5 の新要素の使用が大きな影響を与えるはずはなく、実際この記事を執筆している現時点でも、間違いなく効果は上げていません。
とまぁ手厳しいですが、これは HTML5 がどうこう以前から、当たり前のこととして言われていることではあります。で、続いてこの件に関する参考記事として Google Webmaster Central に投稿された下記の 2つの記事が紹介されます。
Although there may be some more up-to-date sources on this subject, here are a few relevant Google Webmaster Central posts that address this or related issues:
…中略…
The answers to each post are provided by Google employee John Mu, so unlike some of the overly-optimistic posts cited in the previous section, these are worthy of consideration.
You might also be interested in reading this article on HTML5 Doctor for further info on this subject.
訳:
この話題に関して書かれた Google Webmaster Central への投稿記事を挙げてみます。それぞれの投稿へは Google 社員の John Mu 氏により回答が寄せられています。最初に挙げたいくつかの記事に比べこれらは検討する価値があります。また、HTML5 Doctor に掲載されているこの記事も興味深いかもしれません。
上で挙げた Google Webmaster Central への 2つの投稿は簡単に言えば、「HTML5 を Google のクローラーは正しく認識するの?」 という質問ですが、それに対して Google の中の人は 「HTML5 の要素をすべて正しく Google のクローラーが認識できるわけでもないし、どっちが有利とかはないから自分のところのコンテンツに適切だと思った HTML を使えよ」(超意訳) という回答をしています。
さらに、挙げられている HTML5 Doctor の記事は下記ですが、
冒頭で下記のように書かれています。
Through our handy Ask The Doctor service, we get a lot of e-mails asking us about HTML5's effect on Search Engine Optimisation (SEO). While we can't answer in great detail (Messrs Google, Yahoo, Bing, and their friends haven't sent us in-depth details of their algorithms), we've rounded up some useful facts from Google, the world's most dominant search engine.
At the moment, Google indexes HTML5 microdata (more about microdata) but does not reward you for using the new HTML5 structural elements, but neither does it penalise you:
後半の部分ですが、「現時点で、HTML5 の Microdata を使ったからといって特にプラスに働くこともないし、逆にマイナスになることもない」 ということで、ここでも過度な期待はしないようにねという感じですね。
話を Impressive Webs の記事に戻しますが、
HTML5 Can Help Categorize Content
At this point, the only HTML5 technologies that can provide any SEO-related benefits are HTML5 Microdata or schema.org vocabularies (which are based on Microdata).
But even in this case, Microdata will not boost your SEO ranking; it will simply make specific parts of your content have more semantic value, making it easier for search results pages to compartmentalize and display your content to users. You can get more details on this subject on this schema.org FAQ. This concept is similar to Google's rich snippets, but schema.org seems to be a more powerful replacement for rich snippets.
訳:
HTML5 はコンテンツの分類を助けます。
現時点で、HTML5 の技術が SEO に関してメリットをもたらすとすれば、それは唯一、HTML5 Microdata または schema.org の語彙 (これは Microdata をベースにしています) です。
しかし、この場合においても、Microdata はあなたの SEO ランクを押し上げてはくれません。単にあなたのコンテンツの特定部分に今以上にセマンティックな意味を持たせてコンテンツを分類し、より細分化された検索結果をユーザーに提供するだけです。本件に関しての詳細は schema.org の FAQ で見ることができます。このコンセプトは Google のリッチスニペットに似ていますが、schema.org はこれに代わるさらに強力なもののようです。
Microdata をうまく使えば、検索結果におけるコンテンツマッチの正確性を上げることはできそうですねと。これは検索ユーザーにとってはとてもいいことですが、言っていること自体は以前、XHTML で未来の検索はもっと便利になるよ。って言ってたころから変わっていないので、特に目新しくもないお話。そういう意味では HTML5 で正しく構造化された文書が増えることはいいことです。
ということで記事は結論へ。
Don't get too excited about any potential SEO benefits to using new semantic tags in HTML5. The fact is, a website built with HTML tables that has relevant content and quality backlinks will easily outrank any site structured with HTML5 semantics that has poor content and few backlinks.
So be realistic about HTML5's benefits. Semantic tags are not a magic bullet for higher Google rankings, and probably never will be.
HTML5 の新しいセマンティックな要素を使用することによる SEO 的なメリットに期待しすぎてはいけません。関連したコンテンツや高品質の被リンクを持つ table 要素で組まれた HTML ページの方が、コンテンツが貧弱な上、被リンクをほとんど持たない HTML5 で制作された Web サイトよりも上位に表示されるのが現実です。
HTML5 の恩恵に対して現実的になりましょう。セマンティックな要素は Google でより上位に表示されるための魔法ではないし、今後もそうなることはないでしょう。
ということで、最後に私なりにまとめますが、
SEO 的にどっちが有利ですか?なんていう質問で挙がってくるような項目は、検索結果の順位を決める上ではほんの上澄みくらいの価値しかないような部分がほとんどです。HTML5 がいいの?とか階層が深いとだめ?とかドメイン名がどうのとか… etc。そんなことを気にしている暇があったら、ユーザーの検索行動と自分のところのコンテンツ内容がきちんとマッチしているのかとか、内容的に多くの人が参照してくれるような内容なのか、さらにそれが多くの人の目につくためのプロモーションがされているのかなどに頭と時間を使った方がいいでしょう。
利用者のことを考えずに SEO に関する小手先の部分ばかりを気にするのは、スポーツで基本的なトレーニングもしていないのに 「やる気」 や 「根性」 があれば試合に勝てると考えるようなものです。メンタル面は最後のところでの差にはなるでしょうが、根本的な能力差を覆す程にはなりませんから。(話がちょっとずれましたが…)
HTML5 は単純な HTML のマークアップに関して言えば現時点で十分実用的ですし、ソースコードも簡素にできるし、策定中の仕様だというところだけ注意して使ってあげれば、Web サイト制作現場での採用メリットは大きいと思います。なのでフロントエンドの技術選定時に HTML5 を選択したら一番いいよねってことなら積極的に使ったらいいと思いますが、くれぐれも 「SEO のためにもこれからは HTML5 ですよ。HTML5 で全部作り直さないと検索結果の順位が悪くなっちゃうよ」 みたいな話にはならないようにお気をつけください。
ただし、これはまだ先の話かもしれませんが、Google さんなり、検索に関するデータ処理の技術がどんどん進化して、HTML5 + Microdata, RDFa … (よりも進んだ技術が開発されているかもしれませんが) などで意味づけされた文書を正しく理解し、それによって検索結果をより正確に、利便性の高いものに変えていったとき、正しく要素が選択されマークアップされている HTML5 文書と、そうでない HTML5 文書でユーザーへのリーチ率が変わってくるなんてことになる可能性はあります。
また、その時、要素の選択肢が多い HTML5 の方が、文書への意味づけをより明確に行える分、旧来の HTML と比べて有利に働くこともあるかもしれませんし、逆に要素の選択肢が多いことで、間違ったマークアップをしてしまった結果、マイナスに作用するなんてこともなきにしもあらず…
HTML5 を選択するにしても、何となく HTML5 を選択するのではなく、正しく文書構造を作るということに注力しないといけないのは当たり前ですが、マークアップの質が検索結果に与える影響が今以上に大きくなるという可能性は今後長い目でみれば考えられますので、作る側としては気を付けないといけないかもしれませんね。