この記事は 「アクセシビリティ Advent Calendar 2025」 3 日目の記事です。
今年も Advent Calendar の時期になりました。先日、「Movable Type Advent Calendar 2025」 の方で、1 日目の記事を書いたんですが、今回は、こちらもだいたい毎年参加させていただいている 「アクセシビリティ Advent Calendar」 向けに書いている記事です。
さて本題。今回はアクセシビリティをこれから勉強したいと思ったときに、その手助けを AI にしてもらうための MCP サーバを作ってみたらどうだろうって思いつきから実際に作ってみたのでそれの紹介をしてみようと思います。
まず作った MCP サーバは以下。
何がしたかったのか
README.md にも書いてるんですが、かなり、実験色が強い MCP サーバです。
今どき、何か学習するときに AI を活用するというのは一般的だと思うんですが、例えば初学者の方が、単純に AI に質問してしまうと、AI は公式のガイドラインだけでなく、様々な情報を Web から検索したりして答えて来てしまいますし、聞いていないことまで長々と解説してきたりしてあまり学習ならないことが多いです (特に初学者さんの場合、AI が言っていることが正しいのかを検証することが難しい)。
本来、学習に必要なのはそういう独自解説じゃなくて、「あんたが調べたいことなら WCAG のここを読むといいよ」、とか、「具体的な実装方法の例はここのドキュメントに書かれているから読んでみたら?」 というアドバイスというか、誘導だと思うんですが、この MCP サーバは、AI にそういう 「ガイド役」 に徹してもらう。つまり、「お前の知識をひけらかさず、学習のお手伝いのみをするのだ」 という方向で AI を制御することを目的としています。
何をしようとしているのか
この制御のために何をしているのかですが、かなり面倒くさい方法をとっていまして、要するに AI がガイドするための索引的なものを作っておいて、ユーザーの質問から、その索引内でマッチしそうな内容を探して、それに基づいて返答を構築する、みたいな流れです。
どういう方法が良いのかなと色々と考えたんですが、単純に 「この URL / ドメインからだけ検索して答えよ」 みたいな制御では、私がやりたかった、
- ユーザーの質問に関連する達成基準を WCAG から提示する
- 次にその達成基準を理解するため解説書を提示する
- さらに具体的な達成方法や、失敗例をテクニック集から提示する
- 上記の情報、リンク先を段階的に読むといいよとガイドする
という回答フォーマットを返すのが難しく、結局、ありそうな質問、キーワードに対して、関連する達成基準、テクニック集などのリンクをマッピングファイル (これが索引) として事前に作成しておき、そこから決められた形で回答を返すような仕組みにしました。
結果何が起こったかというと、マッピングファイルで想定されるすべての質問に対する的確な組み合わせを定義することなどほぼ不可能なので、返答に質問と関係ない情報が混じったり、あるいはマッピングにないとうまく回答できないみたいな感じに。悩ましい。
一応、サブ的に、達成基準の一覧と、それにマッチする解説書、テクニック集の URL をまとめた補助 Markdown ファイルを用意して、そこからも AI が回答を生成できるようにとか試してはいるんですが、難しいですね。
ということで、全然ダメじゃんって場合はなんかいい改善のアイデアをください。
使い方
インストールや設定については README.md を見ていただければよいとして、まず最初に、
a11y-learning-guide の機能だけを使用して学習の手伝いをして
のように AI にお願いし、この MCP サーバを使うことを前提でチャットを進めてもらえると失敗がないと思います。
ということで、先にも書きましたが、もし試してみていただける方がいて、かつこれはもっとこうすればよいのでは? というよいアイデアをお持ちの方は GitHub の Issue なりで教えていただけるとありがたいです。
ウェブアクセシビリティの書籍を書きました(2026 年 2 月下旬 発売予定)
さて、突然の宣伝ですが、実は今年の夏 (8月~10月くらい) は、新しくインプレスさんから出版する、ウェブアクセシビリティの書籍を書いていました。
この記事が公開される時点で絶賛校正作業中なのですが、原稿自体はもう書き終わってますし、書籍タイトルや表紙なども正式に確定しはじめて、来年、2月下旬発売に向け着々と進んでおります。
今回のウェブアクセシビリティの書籍は、インプレスさんの人気シリーズである、「いちばんやさしい教本」 シリーズとして出版されるもので、書籍のタイトルは 「いちばんやさしい ウェブアクセシビリティの教本」 となります。
どんな書籍なのか
現状では編集作業の真っ最中のため、まだ未確定の部分も多く、もしかすると今後変更される可能性もありますが、現時点で書ける範囲で書籍について書いておきます。
まず、対象読者としては、ウェブアクセシビリティにこれから取り組もうとしている企業の関連部署に所属している方や経営層の方、あるいはビジネスとしてウェブサイトやウェブシステムの開発などを行っているシステム開発会社、ウェブサイト制作会社の PM、ディレクター、デザイナーやエンジニア、もしくはそのようなお仕事をされている個人事業主の方々などです。
「いちばんやさしい教本」 シリーズということもありますので、初学者の方、あるいは少しずつウェブアクセシビリティに取り組みはじめたんだけど、まだ知らないことが多いなと感じている、あるいはここからどうやって先に進んでいこうか悩んでいる、といった方々に本当に基本的な知識や、ウェブアクセシビリティへの取り組みをはじめるにあたって、こういうことを知っておくとよいと思いますよ (例えばガイドラインに関する知識だけでなく、ウェブアクセシビリティに継続的に取り組むための仕組み作りのような話も含む)、という内容を私の経験と知識からまとめたつもりです。
また、ウェブコンテンツを直接的に企画したり制作、運営したりする方々だけでなく、企業の経営層、あるいはブランド戦略や、顧客体験 (CX) 戦略を考えるような方々にも、ウェブアクセシビリティのビジネス戦略上の重要度的な話もしていますので、ぜひ読んでいただきたいな~ などと勝手に思っています。
少なくとも、実装方法をガンガン書いたような「技術書」的なノリではありませんので、「ウェブアクセシビリティよくわからん」「なんかウェブアクセシビリティ大事って聞いたけどどういうこと?」 みたいな方が最初の 1 冊として気軽に手に取っていただける内容になっているはず。
書籍情報 (暫定)
※ 以下の情報はこの記事を書いている時点での暫定です。12 月中旬くらいになると色々と確定して、インプレスさんの公式サイトに情報が掲載されたり、Amazon なんかにも予約ページができたりし始めると思いますので、今後情報が更新された場合は反映していきます。
- 書名: いちばんやさしいウェブアクセシビリティの教本
- 出版社: インプレス
- 仕様: A5判 / 4色 / 272ページ
- 価格: 定価 2,860 円 (本体 2,600 円+税)
- 発売予定日: 2026 年 2月 20 日(金)
ここからは完全に余談ですが、著者の方は原稿終わると編集部の方が初校を作ってくださるのを少し待つような状態になるので、でかい山を越えたぜ、みたいな気分になるんですけども (まさに今その状態)、脱稿してからが書籍は本番というか大変なんですよね。
これは私だけかもしれませんが、こちらが書く原稿は、正直、全体のボリュームについても、各章ごとの想定ページ数内での収まりのことも、読者の方の読みやすさも、表記のブレやらなんてものについても、あまり深く考えずに書いてるわけで、当然そのままコピペしてちょこっと体裁を整えれば書籍になるなんてことはないわけです。
こちらが書いた原稿を、きちんとした書籍の形にしてくださるのが編集の方々なんですけども、そんな畑から獲ってきたばっかりみたいな雑な素材 (原稿) を書籍として読みやすく(文章の細かい調整はもちろん、章や節、文章の順番を入れ替えて読みやすくしたり、原稿ではテキストで書かれているけど、ここは図版に起こした方が理解しやすいのでは? みたいな調整も含め)、誤字脱字や表記のブレなんかも調整しつつ、かつ所定のページ内に納まるように加工・調理 (編集) してくださる編集の皆さんは本当にすげぇなと思います。感謝です。
で、私、書籍を書く度にやらかしがちなんですけども、今回もご多分に漏れず想定ページ数を原稿量が大幅にオーバーするというやつをぶちかましまして......
多分100ページは言いすぎだけど、それに近いくらい指定のページ数上限をぶっちぎって編集の方々には非常にご迷惑をおかけしております。入りきらなかった原稿は、購入者特典という形である程度日の目をみるようにしていただけるということでこちらもありがたい。特典からもはみ出したものはどこかで個人的に公開して成仏させますので、書籍本体だけでなく、特典などもあわせてお楽しみいただければと思います。
ということで、後半の宣伝の方がメインのような感じになっちゃいましたが、以上です。