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EU 圏で Apple の Lightning コネクタが使えなくなるかもという話題について調べてみた

欧州議会委員会に提出された、統一規格による携帯電話充電器を義務づける法律案について全会一致で支持されたことを巡り、日本では Apple の Lightning コネクタが EU 圏内で使えなくなるといった内容の記事が話題になっていましたが、本当にそういうことが起こるのか、調べてみました。

Lightning コネクタMacworld に掲載された、「Apple should be forced to conform to a standard charger, say EU politicians」 という記事が元ネタですが、今日、下記の記事が話題になっていました。

Macworld の記事が、欧州議会内、「Committee on the Internal Market and Consumer Protection (IMCO) 」 において全会一致で支持された、統一規格による携帯電話充電器を義務づける法律 (欧州議会のリリース) に関して、これが正式に決まると Apple は 30ピン Dock コネクタを採用した充電器を破棄しないといけなくなるかもね~ という記事なのに、なんで日本では Lightning コネクタ終わったみたいな話になってるのかな? ってのは気になりますが......

で、あまりこの辺の話は専門ではないのでわからないところが多いのですが、日本の記事で書かれているように、本当に Lightning コネクタが廃止されて (少なくとも EU 圏内では)、MicroUSB コネクタを搭載した Apple 製品が販売される未来がくるの? っていう点が気になったので、本件についてわかる範囲で調べてみました。

ちなみに、私は個人的に 裏表関係なく差せる Lightning の方が Micro に限らず、USB よりは好き (給電機能があるにも関わらず、全部の端子がむき出しっていう仕様のコネクタには最初びびったけど) ですが、本記事は特に Apple を擁護するものではなく、調べた事実をわかる範囲でまとめたものです。

そもそもの発端は 2009年の MoU

リンク先の記事にも書かれていますが、もともと EU では、2009年に 「MoU regarding Harmonisation of a Charging Capability for Mobile Phones (PDF)」 という MoU (Memorandum of Understanding / 了解覚書) を策定し、Apple をはじめとした 14 社がこれに署名しています (署名した企業のリスト (PDF) はこちら)。

MoU 自体に法的な拘束力はありませんが、「コネクタの規格が乱立することによって消費者が混乱したり、新しい携帯電話端末を購入する度に、今まで使っていた充電器を廃棄しないといけなくなるのは環境負荷も高いから、みんなで統一規格の充電器を使えば環境にもやさしくなるよね」 ってことで、2010年から市場に投入する携帯電話端末に関しては、当時すでに携帯電話における電源、データ通信用コネクタ規格でデファクトスタンダードになっていた MicroUSB で充電できるようにしようぜという同意をみんなでしたと。

ちなみに、この MoU の有効期限について、リンク先の PDF の 5ページ目に、6.2 This MoU terminates by 31/12/2012. と書かれている通り、2012年末ですでに切れています。下記の記事によると 1年間の延長が試みられたようですが、実現しなかったみたいです。

2012年の iPhone5 発売と、Lightning コネクタの登場

で、みんなで MicroUSB 使おうぜという MoU に同意した Apple さんですが、2012年 9月に iPhone5 を発表。そしてそれに搭載されたのは、ご存じの通り、「Lightning」 という Apple の独自規格コネクタでした。

これについて、Apple は MoU を軽視していると批判する声もあったみたいですが、実際には、上記で紹介した MoU 内に、下記のような記述があり、

4.2.1 In order that compatibility of as many Mobile Phones as possible with a Common EPS may be enabled, if a manufacturer makes availabl e an Adaptor from the Micro-USB connector of a Common EPS to a specific non-Micro-USB socket in the Mobile Phone, it shall constitute compliance to this article.

アダプタを使用することで共通の充電器を使えるようにする方法も認められていて、実際に Apple は欧州のみですが、MicroUSB → Lightning 変換コネクタを iPhone5 と同時に発売 (別売りです) しています。

よって、iPhone に搭載するコネクタとして MicroUSB を採用しなかったのは確かなのですが、変換アダプタで MicroUSB 充電器が使えるんだから、MoU には従ってますよっていう話になり、文句は言えなかったみたいですね。

元々、この MoU の主題は 「携帯電話には必ず MicroUSB を搭載しよう」 という話ではなく、「共通の充電器を使えるようにして規格の乱立や、廃棄物を減らそう。そのための標準規格としては MicroUSB を採用しよう」 というものですので、MicroUSB 以外のコネクタを搭載したこと自体は MoU 軽視とか、無視には当たらないというのが Apple の考えなんでしょうし、客観的にもまぁそう言われればその通りですねとしか言えない気がします。

今回の法律案についてと Lightning コネクタの行く末

で、今回の法案の話につながります。前述したとおり、2009年にかわされた MoU の有効期限はすでに切れていて、延長しようとしたもののできなかった経緯があるので、今度は法的拘束力のある、法案として提出されたという流れなのかもしれません(この辺、憶測)。

ただし、今回の話は法律の制定が決まったわけではなく、法案が欧州議会内の 「Committee on the Internal Market and Consumer Protection (IMCO) 」 (訳すと 「域内市場及び消費者保護委員会」 になるのかな? 日本で該当するのが何になるのかわかりませんが) に提出され、全会一致で支持されたという話です。

内容的には、プレスリリースを読む限り、前述した MoU と同じのようです。「ユーザーのコスト負担と、廃棄物削減を実現するため、共通で使用可能な充電器との互換性を携帯電話端末メーカーに義務づける」 と書かれています。

Universal charger

Radio equipment devices and their accessories, such as chargers, should be interoperable, say MEPs. For example, a universal phone charger would make mobile phones simpler to use and cut costs and waste for users. They therefore propose that the new radio equipment rules should oblige manufacturers to make mobile phones compatible with a universal charger.

Bring in a universal mobile phone charger for all makes, say MEPs から引用

ただし、今回は MoU ではなく法案なので、正式に法律として制定されれば、「共通で使える (ユニバーサルな) 充電器への対応」 を企業に義務づける法律となり、これは法的拘束力を持ちます。

で、それによって Lightning コネクタ終了のお知らせとなるかについては、法律の詳しい内容がわからないのであれですが、今回も変換アダプタの使用による共通充電器への対応によって、特に問題なしとされるのであれば、恐らく Apple は現在は別売りで提供している MicroUSB → Lightning 変換コネクタを、iPhone 等、携帯電話製品に同梱すれば OK ってことになると思いますので、多分それで終わりになるんじゃないかなと。

Dock コネクタは終わる。っていうかもう終わってるけど

Apple は Lightning コネクタに関しては、MicroUSB 端子を持つ充電器等に対応できるように変換コネクタを純正品として提供していますが、旧来の Dock コネクタに関してはこのような製品を提供していません。

Dock コネクタは、一部製品では給電に対応していたりしなかったり、リリース時期によって仕様が異なるなどの問題もあって変換アダプタの提供が難しいものと思われますが、これによって、この法律が正式に制定された場合、Dock コネクタ搭載の携帯端末を販売することはできなくなるものと思われます。そういう意味では Dock コネクタは終わったって感じでしょうか。

とはいえ、どっちにしろ今後 Apple から Dock コネクタを搭載した携帯端末が出ることはないと思いますし、上記法律が制定されたとしても、過去にリリースされた携帯端末は当然対象外になるのであまり関係のない話かもしれません。

まとめ

ということで、この記事における結論。

「今回の件で Lightning コネクタが終了ってことにはならないし、本法律が正式に制定された場合でも、MicroUSB を搭載した iPhone は登場せず、(EU 圏内では) 変換コネクタが iPhone に同梱されて終わりと思われる。」

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