先日、2024 年 12 月 24 日の発売を予告させていただいた著書 「できるポケット HTML&CSS 全事典 改訂 4 版」 ですが、11 月末の時点で無事、校正などの作業をすべて終え、あとは全国の書店に並ぶのを待つだけとなりました。
- 著書 「できるポケット HTML&CSS 全事典」 が 3 度目の全面改訂、「改訂 4 版」 の発売が決定しました
- できるポケット Web制作必携 HTML&CSS全事典 改訂4版 - Amazon.co.jp
発売まで約 1 週間という状況で、手元には見本誌なども届きましたので、書籍の内容も交えつつ、今回の改訂でどの辺が変わったのか、苦労した点や残念ながらやり残した点などについても書いてみたいと思います。書籍の 「あどがき」 みたいなものだと思ってください。
今回の改訂で目指したこと
できるシリーズの編集部さんから今回の改訂のお話をいただいた際に目指したのは、大きく以下の 3 点でした。
- 改訂 3 版の時から新たに策定されたり、仕様の内容が変わってしまったもの (HTML も CSS も) については当然ながら最新の仕様に則った解説に変更する
- 改訂 3 版の刊行時には 「まだブラウザのサポートが揃っていないから」 などの理由で掲載を見送った CSS のセレクタ、プロパティ、関数や @規則などについて、なるべく多く掲載する
- 改訂 3 版までは、「インデックス・索引」 が、アルファベット順で掲載内容をまとめたものしかなく、ページ数が増えるほどに使いにくくなっていたので、「目的別」 のインデックス・索引を追加する (これは編集部さんからの提案)
1 つめは、まぁ当然といえば当然で、過去の改訂ごとにやってきたことなのですが、2 つめの件については、改訂の企画が通って、実際に動き出した当初に、「とりあえず今の書籍 (改訂 3 版のこと) に載っていないもので、今回掲載したい項目を出しますね~」 なんて軽い気持ちで言ってスタートしてみたら、結構すごい数が挙がってしまいまして。
改訂 3 版が発売されたのが 2022 年ということで、要するに、ここ 2 年間で新たに仕様が追加され、さらにある程度ブラウザの実装の足並みが揃ったものを挙げただけなんですが、それでも 100 項目とか、150 項目とか出てきちゃってもう大変。それだけ近年のブラウザの進化、というか新しい仕様への対応速度は凄まじく速いということでしょう。
(出版社の中の人ではないので詳しくは知りませんが)書籍の改訂が進む場合、まずは出版社さんの中で 「今回の改訂でページ数はこのくらいになります」「このページ数なので販売価格はいくらくらいです」「で、こんくらいは売れると思います」 みたいな話を担当編集の方が上司などの偉い人々にプレゼンし、Go サインがでて、はじめて著者は具体的に動き出すわけですけども、執筆をはじめる前の、掲載項目リストアップ時点でもうこの想定ページ数を余裕でぶっちぎる勢い。
「まぁまぁ、書いてみたら意外と収まるかもしれないですし」 とか言いつつ、とりあえず記事の執筆を進めていくと、「あ、このプロパティが抜けてた」 みたいのが出てくる出てくる...... 編集部の方からすれば 「まじかこいつ」 と思われていたかもしれませんが、私としても 「これを載せたのに、こっちを載せないのはおかしい」 という譲れない部分もあり、色々な妥協点 (後述) を探りながら、なんとかギリギリ収めた次第です。
当初編集部さんが想定していたページ数は 「672 ページ」(改訂 3 版から約 80 ページ増加予定)だったんですけども (実際、その表記で Amazon などでは予約が始まってた)、結局は 720ページ (改訂 3 版から 128 ページも増加) という、ぶ厚い書籍になってしまいました。
下記の写真は前書 (改訂 3 版 / 写真下)と、今回の改訂 4 版 (写真上) を重ねてみたものですが、かなり厚みが増しているのがわかると思います。編集部さんと話しているときに 「もはや鈍器ですね......」 と言われるレベル。
ページ数は書籍の販売価格に直結するため、安易にページ増やしちゃえばいいじゃん、とはならないんですよね。ページ数が増えれば、当然 「販売価格が高くなる」 わけですし、予約とか始まっちゃってから価格が高くなるってのは避けたい事態ですから、なんとかして限界のページ数内に収めるっていうのはとても苦労した点です。まぁ苦労したのは私じゃなくて編集部の皆さまなので私としては感謝しかないんですけども。
新しくなったインデックス・索引
で、編集部の方が今回がんばってくださった 「インデックス・索引」 は下記のような感じになりました。目的別にリストされているので、ここをざ~っと眺めているだけでも 「あぁこんなことできるんだ」 という感じで面白いかもしれませんよ。
一部ですが、実際の紙面。上が HTML 編の目的別インデックス。下が CSS 編の目的別インデックスです。
今回の改訂でできなかったこと
前述の通り、現時点である程度ブラウザサポートの足並みが揃っている CSS の機能を網羅しようと思うと、紙面がいくらあっても足りないって状態になります。これが紙の書籍のつらいところですね。掲載量を上げるために、情報をギッチギチに詰め込んで文字を小さくするっていう手もありますけども、書籍として読みにくかったら意味がないですし、難しいところです。
今回の改訂ではすでに書籍のページ数が 700 ページを超えていて、「全辞典」 なんてご大層な名前を冠している分、その名前に恥じない分厚さになったとは思いますが、やはりページ数には限界があります。結果として何が起こったかというと、どうしても下記のような点で妥協するしかありませんでした。
- もうちょっと図版とかを用いてわかりやすく解説したいが、図版は場所をとる → 仕方ない削ろう
- もっと実用的なサンプルソースコードを沢山掲載したいけどソースコードとその解説っていうセットはとても場所をとる → 仕方ない削ろう
なるべく多くの項目を掲載しようと努力した結果、各項目にさけるページ数がどうしても限られてしまうというジレンマですね。今回は、ブラウザのサポートが足並み揃っているのに、紙面に掲載されていないという項目がなるべく少なくなる方を優先したため解説の濃さの方で少し我慢しないといけない部分が出てしまいました。
ごっそり掲載を諦めたといえば、SVG では頻繁に使用するプロパティ (fill
プロパティなど) についてはページ数の都合で全カット...... まぁ仕方ない。
あと、アクセシビリティ関連で WAI-ARIA については本来きちんとページを割いて解説したかったんですが、これもページの都合で HTML 編のグローバル属性を紹介している章の最後に、「こういうのもあるよ」 程度の触れ方しかできず (ここは前書と変わらず) という結果に。無念。
改訂 4 版が沢山売れて、改訂 5 版の話がいただけた際にはこの辺を頑張りたいなと思いますので皆さん、ぜひご購入ください。
紙の書籍を手元に置くメリット
これは以前から書いてるんですけどね、今どきは HTML や CSS のリファレンスなんて Web で調べればたくさん情報はあるし、HTML や CSS、JavaScript などの Web 系技術に関して、Web 開発者の方であれば恐らくほぼ全員がご存じの MDN Web Docs という良質なコンテンツがあったりと、わざわざ書籍 (電子書籍も含め) を買う意味あるの? と思われる方も多いのかもしれません。
情報の新鮮さ (大本の仕様の変更や追加に対する即応性) という点では、紙の書籍は Web サイトには絶対に勝てませんから、常に最新の情報を知りたい場合は確かに Web で検索する方が速いし確実なのかもしれません。ただ、Web の情報は、基本的に自分から能動的に調べに行かなければ見つけることができないため、情報との接触が 「点」 になりがちです。
書籍の良いところは、パラパラとめくって全体を眺めることで、ある分野の情報に 「面」 で接触できる点ではないでしょうか。その意味で、「こんな CSS プロパティがあったのか」「この HTML 要素にはこんな属性の指定があったのか」「こんな CSS 関数があったのか」といった気付きが発生しやすいというのはメリットだと思います。
まぁもちろん、私が書籍を書いている立場なのでかなりのポジショントークだという点は否定しませんけども、個人的に、子どもの頃、家に置いてあった百科辞典を読むのが好きだったのもあり、所謂 "Down the rabbit hole"、つまり、「何かをきっかけにしてどんどん深みにはまっていく」「ひとつの項目を読んでいるうちに、気がつけば関連情報を辿って延々と読み漁ってしまう」ような体験ができるのは辞書系の書籍の楽しみかなと思いますので、ご興味があれば書店で手に取ってみていただけると幸いです。
ありがたいことに前書をご購入いただいた方からも「手元に置いておいてサッと開けるってやっぱ便利っすね」「今まで使ったことなかったけれど、もっと早くに知っておきたかったと思える便利な CSS プロパティを書籍を読んだことがきっかけで知ることができました」といったポジティブな反応を頂いておりまして、少しでもお役に立てたならと非常に喜んでおります。
ということで、「前から HTML / CSS のリファレンス本が 1 冊欲しかったんだよね」「B6 サイズでコンパクトなリファレンス本ちょうど探してたんだよ」「『HTML / CSS 完全に理解した』と同僚にドヤりたい」「クリスマスプレゼントとして贈るぶ厚い書籍を探していました」 などという方がいらっしゃいましたら、この機会にご購入いただければ幸いです。
ご購入(ご予約)はこちらから
Amazon をはじめ、下記のオンラインショップでも予約できるようなのでリンクを掲載しておきます。その他、全国の書店さんでも注文可能だと思いますのでお近くの書店さんにご確認ください。
学校や会社でご購入いただく皆さまへ
学校で HTML や CSS をカリキュラムとして教えていらっしゃる講師の方、あるいは教科書採用のご担当者様、または Web サイト制作会社など、日常的に HTML / CSS を扱う会社の福利厚生の一環としてなど、一括購入のご予定がございましたら、下記の窓口から一度お問い合わせいただければと思います。
今月24日に発売される最新著書 『できるポケット Web制作必携 HTML&CSS全事典 改訂4版』 の見本誌が編集部さんから届いたので開封の儀。結局前書(改訂3版)から約130ページも増えて、720ページになりました。圧倒的分厚さ。鈍器としても使用可能 pic.twitter.com/gHger4msq3
— Yoshiki Kato (@burnworks) December 13, 2024
前書(改訂3版)と厚さ比べしてみたけど、130ページも増えるとさすがに結構厚みが違う。ちなみに編集部さんが最初に予定してたのは672ページ(それでも前書から80ページ増)でしたが、わたくしが「これも載せろ」「これは外せん」などとわがままを言った結果、こんなことになりました pic.twitter.com/GfhV3XVzSi
— Yoshiki Kato (@burnworks) December 13, 2024